国際女性デー2020 トークセッション 〜LiLiCoさんと語る 映画の中の女性たち〜 映画からジェンダーを考える

私たちの身近にあり、ときに影響を受け、さまざまな考えをめぐらせるきっかけにもなる映画。映画コメンテーター・タレントとしても活躍中のLiLiCoさんをお迎えし、映画の中の女性たちをはじめとしたさまざまなお話をおうかがいしました。(聞き手:公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン理事 大崎麻子)

3月5日(木)は「国際女性デー」「国際女性デー」は、女性の自由と平等について考える日。途上国の女の子への支援に力を入れているプラン・インターナショナルは、毎年この日を記念してイベントを行っています。 3月5日(木)は「国際女性デー」「国際女性デー」は、女性の自由と平等について考える日。途上国の女の子への支援に力を入れているプラン・インターナショナルは、毎年この日を記念してイベントを行っています。

男女の描かれ方が多様に。
でも周囲の価値観は進化していない。

大崎理事
LiLiCoさんはティーンエージャーのころにどんな映画に影響を受けましたか?
LiLiCoさん
「グリース」(1978年日本公開)です。11歳くらいのときに観たんですけど、ちょっと弱い感じの主人公の女の子が少しずつ内面も含めて強くなっていって、最後にエナメルの服にピンヒールを履いて、真っ赤な口紅で好きな男の子とカップルになるの。もう、すっごくかっこいい!って思いました。
大崎理事
私は「ワーキングガール」(1988年日本公開)ですね。高卒の秘書職の若い、かわいらしい女性がウォール・ストリートの投資銀行で出世していく話なんですが、マンハッタンで働く女性ってかっこいいなと憧れました。
LiLiCoさん
わかりやすいですよね。
大崎理事
ところが最近観たら印象が違う。学歴のある、数少ない女性管理職が、野心家で攻撃的でイヤな女性として描かれていて。一方、主人公は能力があるとはいえ、恋人である男性のおかげで出世していく。当時はステップアップのために「かわいさを失わず、男性に認められること」が肯定的に描かれていましたが、いまはそういう感覚ではありませんよね。ニュースキャスターの女性たちが、男性上司のセクシュアルハラスメントを告発する「スキャンダル」(2020年日本公開)を観ても、男女の描かれ方が変わってきているなと感じます。
LiLiCoさん
映画はどんどん変わってきていますね。でも取り巻く環境はどうなのかな。少し前に「チョコレートドーナツ」(2014年日本公開)という作品があったんですが、ショーパブで歌う男性と弁護士のゲイのカップルとダウン症の男の子の話ということで、どのTV番組でも取り上げてもらえなかったそうなんです。私が昼の番組で紹介したら傑作だということがやっとわかって、上映館がものすごく増えました。こんなに多様な世の中になって、いい作品がたくさんあるのに、プロデューサーがゲイの話だからTVで紹介しないなんて、いったいどんな教育を受けてきたの?と思います。そういう人たちが変わっていかないといい作品も埋もれていってしまいます。

大切なのは教育。意思決定の場に
女性が入っていくこと。

大崎理事
教育というのはとても大きいですよね。
LiLiCoさん
性教育についても日本は不思議だと思います。女の子だけが生理の話をされるでしょう?スウェーデンでは8歳で男女一緒にみんなで性や生理、出産について学ぶんです。学校で。ちゃんと理解するから、生理でプールを見学してもからかう男子なんていない。日本では大人でも生理というと嫌な顔をする男性がいる。考えられないですよ。
大崎理事
生理は隠すべきもの、という意識が植え付けられますよね。お店でも、生理用品は外から見えないようになのか、黒い袋に入れられる。見られないように、知られないようにという空気がありますね。
LiLiCoさん
「月一の生理」と聞いて、生理が月に1日しかこないと思っている男性もいるんですって!信じられないでしょ?でも知らない男の人が悪いんじゃない。最初に教えた人が悪いと思う。教育のことを決めている人はきっと年齢が上の男性たちなんでしょう。「生理ちゃん」(2019年日本公開)って映画があったけれど、紹介するときにみんな「デリケートなテーマだから」って先に言うんです。もっとオープンに笑いながら話せるようにならないと、いつまでたっても生理の話も性の話もタブーのままですよ。
大崎理事
日本は、性に関することやパートナーとの対等な関係を築くための基本的な知識が普及していませんよね。ものごとを決める場に女性がいない、経済や政治の場に女性リーダーが少ない。世界経済フォーラムが発表する「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」が世界で121位ということにも関係している大きな問題だと思います。
LiLiCoさん
スウェーデンでは宮殿で衛兵交代式があるんですが、女性のリーダーがいるんです。私にとっては当たり前の光景でしたが、日本から来たTVクルーは驚いていましたね。
大崎理事
性教育、ピルや緊急避妊薬などの解禁・使用についても、政策決定の場にいるのはシニア男性ばかり。「私たちの身体のことを私たちがいない場で決めないでくれ」という声が上がってくるのも当然です。
LiLiCoさん
本当にそう。決めている男性たちが理解してないから進んでいかない。つい最近、とても驚いたことがあって。多忙な中で必死にスケジュールを調整して舞台を観に行ったんですけど、そのときに乗ったタクシー運転手に「女は昼間から芝居が観られていいよな。男は働かなきゃいけないから」と言われたんです。もうLiLiCoスイッチがONになって(笑)。怒りを抑えつつ、それは違うということをしっかり教えてさしあげました。この方に限らず、そういう考え方が、まだ多いのではないでしょうか。

男も女も関係ない。
自分で考えて、自分で伝える。

LiLiCoさん
スウェーデンは共働きが多くて、よその家庭が子どもの面倒を見てくれる「デイマザー」という制度があるんです。みんながみんなを助ける、みんなで子どもを教育するんですね。私も両親が働いていたので昼間はほかの家族と過ごすことが多かったんですが、そこで自立すること、分け合うこと、人と話すことを学びました。コミュニケーションはすごく大切ですよ。男も女も関係なく、ちゃんと自分が思っていることは伝えなくちゃ。「なんで言わないの?」と思うこと、日本にいるといっぱいあります。
大崎理事
プランでは途上国の女の子と男の子が、対等な関係を結ぶためのワークショップを行っていますが、日本にこそ必要かもしれませんね。「セクシュアル・コンセント(性的同意)」の大切さがようやく知られてきましたが、このような対等なコミュニケーションを身につけることで、女性が身体や性についてはもちろん、あらゆる場面で自分自身のことを決める力もよりついてくるのだと思います。
LiLiCoさん
小さいときから自分で考えて自分で決める。それを自分の言葉で伝える。それが進んでいけば、この国はもっと変わると思います。

一年に1日じゃない。
毎日が国際女性デー日和。

大崎理事
今の十代は変わってきています。多様性というものを理解しているし、映画や広告でもっと多様な人やライフスタイル、美のあり方を見たいという声も上がっている。「チョコレートドーナツ」のような作品は若い人たちに望まれていると感じます。
LiLiCoさん
一方でいまだにバラエティ番組で独身女性を揶揄したり、女性アスリートに得意料理を聞いたり…。そんなの人それぞれでいいじゃない。
大崎理事
女性へのステレオタイプな投げかけはやめて欲しいですよね。
LiLiCoさん
生きにくさを感じている女性も多いと思いますが、私は「自分を持つこと」でたくさんのことを乗り越えてきました。女性の方も「女だから」と自分で自分を下げる必要なんてない。「国際女性デー」というと1日のことになってしまうけれど、私にとっては毎日が女性デー日和。年に一度ではなく、毎日その気持ちを持ち続けることが大切だと思います。

LiLiCo

リリコ(映画コメンテーター/ タレント)
スウェーデン・ストックホルム生まれ。スウェーデン人の父と、旅行中に出会った日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS「王様のブランチ」の映画コーナーを担当し、テレビ・ラジオやイベントなどにも多数出演。アニメの声優やナレーション、女優として映画やドラマにも出演するなどマルチに活躍する映画コメンテーター。著書に『LiLiCoの映画的生活』『ザリガニとひまわり』のほか、近著に『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』がある。

大崎 麻子

おおさき あさこ(プラン理事、関西学院大学客員教授)
米国コロンビア大学 国際公共政策大学院で国際関係修士号(人権・人道問題先専攻)を取得後、国連開発計画(UNDP)に入局。途上国のジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進を担当し、世界各地で女子教育、雇用・起業支援、政治参加の促進、紛争・災害復興などのプロジェクトを手がけた。大学院在学中に長男を、国連在職中に長女を出産し、子連れ出張も多数経験。現在はフリーの専門家として、国内外で幅広く活動中。著書に『女の子の幸福論 もっと輝く明日からの生き方』『エンパワーメント 働くミレニアル女子が身につけたい力』がある。

映画のこと、性のこと、教育のこと、日本とスウェーデンの違いなど、熱いトークで盛り上げてくださったLiLiCoさん。意思決定の場に女性が入っていくことの大切さや自己決定の確立など、プランの活動と通じるお話も多くありました。男性と女性が対等なパートナーとしてお互いをサポートし合うことが、社会変革につながっていくことを改めて感じました。

途上国では伝統や風習などによって「女性は差別されて当たり前」と刷り込まれ、多くの女の子や女性たちが虐げられてます。私たちはこの認識を変えるために、さまざまな支援活動を行っています。

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プラン・インターナショナルでは、差別され虐げられている途上国の女の子を応援し、自立の過程をサポートする支援者を「親」と称したキャンペーンを展開しています。知ってください、世界の女の子たちの現実を。

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